昨日の朝の教室で、何かの言葉を聞くと必ず思い出す話があるという話題が出た。
夜の教室で生徒さんが、行った気分になる旅行番組を観たと言って、モロッコの話が出た。
私のキーワードはそのモロッコだ!
もちろん行ったことはないが、モロッコと聞く度に思い出す遠い々青春時代がある。
高3の一年間、個人の英語塾に通っていた。
私が入ってから男子3人、女子3人となり、そのうち女子3人と男子1人は小学校の同級生だった。
高校はいくつかに分かれていたが、週2~3回、夜8時頃から集まって授業を受けていた。
先生もインド哲学に造詣の深い面白い先生だったが、メンバーもそれぞれ個性の強いなかなかの面々だった。
おかげで私の英語の成績は上がり(一応先生の名誉のためにそうしておく)、楽しい?塾生活を送った。
さて、その中の男子Y君は、薬局の息子で一人っ子、マジメだがどこかボケたところのある天然に面白い子だった。
その子に関する話は数々あるが・・・
翌年無事東京の大学に決まったY君は一人暮らしを始めた。
夏休みに帰る度に先生の家に集まり、近況報告を兼ねて話をする。
Y君はとても活動的になり、大学生活を楽しんでいた。
グッチ裕三似の顔はバイト先でもオバチャンたちに気に入られ、お金を貯めてあちこち旅行に行っていた。
海外にも足を延ばし、何度目かの時、ヨーロッパ+ちょっとアフリカ辺りの貧乏旅行を思い立った。
宿と食事は切り詰めて、一日いくらの予算だとか、どこどこに行くつもりだとか・・・
今から30数年前の頃、まだまだ誰でもすぐに海外に行ける時代ではない。
当時の私は、あのボケたY君が・・・すごいなぁ・・・と感心しながら聞いていた。
時は流れ、その次に会った時、その旅行の話をしてくれた。
話の大体はすでに忘却の彼方、覚えているのは・・・
大学が始まっても帰って来なかったY君、学内では連絡も無い彼のことを行方不明になったとか、挙句の果てはモロッコで殺されたなどと言う噂がささやかれていたらしく、大騒ぎになりつつあったらしい。
そんなことは知らないY君、ノー天気に帰って大学に顔を出したら、皆に超驚かれたと笑い話にして話してくれた。
それ以来、私の中では、モロッコ=Y君謎の失踪事件と結びつき、何度その言葉を聞いても、その時のY君の笑顔が思い出される。
今でもたまにY君の実家の前を通るが、かなり前から薬局の看板は外され、お店にはカーテンが閉められ、ひっそりとしている。
今頃どこで何をしているのか・・・